重症患者における輸液の種類で予後は変わらない(The BaSICS Randomized Clinical Trial)
【論文】
Effect of Intravenous Fluid Treatment With a Balanced Solution vs 0.9% Saline Solution on Mortality in Critically Ill Patients
Fernando G. Zampieri,JAMA(2021)
【初めに】
生食は様々な論文でAKIのリスクや腎血流低下や合併症を増加させるといった報告があった.
【要旨】
目的:ICU患者における輸液内容の違いで90日死亡率に差が出るのかを調べる.
方法:前向きランダム化試験.調整輸液群5522人と生食群5530人に無作為に割り付け.(電解質異常のある患者などは除く.)
結果:48.4%の患者が予定手術入院患者.60.6%の患者で昇圧薬を要し,44.3%の患者で人工呼吸器管理を要した.90日までに調整輸液群では1381人(26.4%),生食群では1439人(27.2%)が死亡.HRは0.97で95%CIは0.90-1.05で両群に差は認めず.
【対象・方法】
・ICUに24時間以上滞在が必要とされる患者且つ少なくとも1つ以上のAKIのリスクファクターを有する患者が対象.(65歳以上,低血圧,Sepsis,乏尿,肝硬変,Cr高値)
・調整輸液はPlasma-Lyteを使用.(Na140 K5 Mg1.5 Cl 98 酢酸27 グルコン酸23)
【結果】
・3日で入った輸液量の中央値は4.1L(SD2.9 L)Study以外の輸液も含む.
・両群の総輸液量の差はない.
・Cl値は生食群でやや高くなる傾向あり.
・両群の累積死亡率に差はない.
・Secondary Outcomeとして7日目のTotalSOFAスコアは有意差があったが、Neurological>2の項目で調整輸液群が高値であることが原因であろう.
・サブグループ解析ではと頭部外傷で交互作用を認めた(HR, 1.48; 95% CI, 1.03-2.12)
【Limitation】
・Study以外の点滴も含まれる.
・ERやOpeの点滴は考慮されていない.
・予定手術の患者は死亡することが少ない.
・特定の輸液の比較であること(Plasma-Lite)
・死亡率が予測より低かった.
・輸液量が比較的少なかった.