胃癌におけるERASの有効性
【論文】
胃癌手術における術後感染症対策,早期回復を念頭においた周術期管理プログラムに関する前向き無作為比較試験
田中 亮ら,日本外科感染症学会雑誌 17(2):75 〜 81,2020
【要旨】
根治切除可能な胃癌症例を対象として,従来型クリニカルパスに沿った周術期管理を行う conventional 群(C 群)と ERAS Ⓡに基づく管理を行う ERAS Ⓡ群(E 群)に割り付けた.主要評価項目は術後在院日数,副次評価項目は術後合併症発生率,術後 1 ヵ月以内再入院率,体重減少率.2013 年 7 月から 2015 年 6月まで 148 例を登録し,C 群 69 例,E 群 73 例が解析対象.プロトコールの完遂率は C 群 81.2%,E 群 87.7%であった.術後在院日数の中央値は C 群 10 日,E 群 9 日であり,E 群の在院日数は有意に短縮された(P = 0.037).Clavien─ Dindo 分類 Grade Ⅲの合併症は C 群 10 例,E 群 3 例であり,E 群で有意に少なかった(P = 0.042).両群で1 例の再入院を認めたが保存的治療で軽快した.術後 1 週間および術後 1 ヵ月の体重に関して,E 群で有意に体重減少が抑制された(P = 0.020,0.021).
【ERAS内容】
ERASの内容として前処置省略,絶飲食期間短縮,炭水化物ローディング,早期経口摂取,輸液早期終了,鎮痛剤の予防内服,ドレーンの可及的省略.
【術後成績】
【考察】
・炭水化物ローディングにより術後のインスリン抵抗性を改善させる.
・ドレーン省略の方が腹腔内感染が少ない→ドレーンが感染の温床となっている可能性.
・体重減少率の抑制→術後化学療法への導入がスムーズ