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免疫チェックポイント阻害療法と関連する腸内細菌

【論文】

がんに対する免疫チェックポイント阻害療法と関連する腸内細菌叢

安達ら,腸内細菌学雑誌 2021

 

【要旨】

CTLA-4やPD-L1/L2などの免疫チェックポイント分子は,本来,「適切なタイミング」かつ「適切な部位に」発現されることで免疫システムの過剰な活性化や暴走を防ぐために腫瘍微小環境中では免疫チェックポイント分子が“異常に”高発現することが知られている.その結果,がん組織内には強い免疫抑制環境が形成されており,多くのがん種で治療抵抗性の大きな要因となっている.このようながんの免疫逃避機構に対して,腫瘍微小環境中の免疫抑制機構を解除・軽減することを目的とした治療法が免疫チェックポイント阻害療法である.

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【薬剤一覧】

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【バイオマーカー】

臨床効果,あるいは有害事象と相関するバイオマーカーを同定することは最も喫緊の課題の一つ.

PD-L1 抗体を用いた免疫チェックポイント阻害療法に関連して,
① がん組織内,あるいはがん組織周辺部位へのT 細胞の浸潤
② がん組織におけるB 細胞リッチな細胞凝集体(三次リンパ組織様構造)の形成
③ がん細胞上のPD-L1 の発現

④ がん組織に浸潤している免疫細胞上のPD-L1 の発現
などが,細胞レベル,分子レベルで判断されるバイオマーカーとして提唱されている.

→課題多く実用化なし

 

【腸内細菌とバイオマーカー】

抗PD-1/PD-L1 抗体投与の前後に抗生物質を投与されなかった患者群では,抗生物質を投与された患者群と比較して,PFS および全生存期間の延長が認められた.また,実
験的マウス担がんモデルにおいても同様の結果が得られた.これらは,抗生物質の投与によって誘導された腸内細菌叢の減少,あるいは構成変化が抗PD-1/PD-L1 抗体療法の効果に影響を与えた可能性を示唆するものである.

最も強い相関関係を示した腸内細菌はAkkermansia muciniphila.