吃逆と化学療法
【論文】
Hiccups in Cancer Patients Receiving Chemotherapy:A Cross-sectional Study
Mevlude Ergen MSc et al. J Pain Symptom Manage(2021)
【要旨】
セルフレポートアンケートを用いた横断研究.
対象は18歳以上の化学療法(少なくとも1コースは完遂)を受けた癌患者160人.
吃逆は37/160(23%)で認められた.そのうち65.9%が男性であり,消化器系悪性腫瘍が54.1%を占めた.
吃逆の持続時間としては83.8%が48時間以内で治まっていた.
10.8%の人が薬物治療を受け,27%の人が非薬物治療を受けた.
【患者背景】
・吃逆(+)群でFOLFIRINOXが40.6%.
【吃逆に関して】
・吃逆のSeverityは3.81±2.25(10段階)
・無治療が73.0%.
・薬物治療はメトクロプラミド2人,クロルプロマジンが1人,2剤併用が2人.
【感想】
・症例数が少なく統計的な部分は触れられていないが,ケモ中の吃逆は臨床上しばしば経験するので面白い内容だった.
・少ない経験だがCDDPは比較的よく吃逆が出ていた気がするので,Nが増えてレジメンごとに差が見てみたい.
・経験上、どちらかといえば肥満の人の方が吃逆が多い傾向にあったので体格についても検討してほしかった.
【補足:薬剤誘発性吃逆の機序に関して】
吃逆中枢は延髄疑核近傍網様体内にあり,GABAによる抑制を受けている.そのためGABA拮抗作用をもつ薬剤は吃逆誘発作用をもつと考えられる.ステロイドはGABA促進作用と拮抗作用という相反する作用をもつことが報告されているが,吃逆中枢ではGABA拮抗作用が強いと考えられる.キノロン系抗菌薬はGABA拮抗作用による痙攣誘発作用があり,抗腫瘍薬には痙攣誘発性のある薬剤があり,白質変性作用をもつことなどが示唆され,GABA作用と関係する可能性が考えられる.
(薬剤誘発性吃逆の3症例:原因薬剤と機序,近藤司 日救急医会誌(2019))